呼吸困難時の評価と対応について
記事執筆:
「呼吸困難」の評価に欠かせない 気道・呼吸の異常を見極める方法について今回はお伝えします。
- 目次
~2026年4月20日まで
2026年5月8日~5月24日
本記事では、患者さんが呼吸困難を訴えた際の評価から実際の対処法についてわかりやすく解説していきます。
呼吸困難とは
一般的に呼吸困難は、「呼吸に際して、不快・苦痛を自覚し、呼吸することに大きな努力を必要とする状態」と定義されています。
簡単に言うと、呼吸が不十分で息苦しさ、息が吸えない、息切れがある、努力呼吸がある、という状態を指します。
呼吸困難の症状についてはこちら「呼吸困難の症状と原因」をご参照ください。
患者さんが呼吸困難を訴えた場合の対応
患者さんが呼吸困難を訴えた場合は、以下の流れに沿って評価し対応しましょう。
①第一印象
↓
②迅速な一次評価(ABCDEアプローチ)
↓
③緊急性の共有
↓
④生命維持のための行動
第一印象
患者を見たときの最初の2 ~ 3 秒の印象で、意識(D)・気道(A)・呼吸(B)・循環(C)といった生理学的な異常を迅速に評価して、緊急性を伝えることが大切です。
・意識(D):ぐったりしていないか? 反応はあるか? 不穏状態ではないか? など
・気道(A):異常音はないか? 呼気を感じられるか? 発声はあるか? など
・呼吸(B):呼吸が速くないか? 遅くないか? 努力様(きつそうな)呼吸はないか? など
・循環(C):冷汗やチアノーゼは? 顔色は悪くないか?など
全体的な患者の印象から、すぐに対応が必要か否かの判断を行います。
迅速な一次評価(ABCDEアプローチ)
一次評価ではバイタルサインの測定を行いながら、「A:気道」「B:呼吸」「C:循環」「D:中枢神経」(E:体温・外傷)を評価します。
A:気道
呼吸困難の原因が、上気道の狭窄と閉塞による場合は、気道緊急の有無を評価します。
気道緊急とは、無反応、無呼吸、瀕死の呼吸状態など、直ちに何らかの気道確保が必要な状態を指します。その原因は、アナフィラキシーによる咽頭浮腫や気道内異物、咽頭腫瘍などで、上気道は完全閉塞に移行し、呼吸停止から心停止に至る緊急性が高い疾患であるため、迅速な気道確保が必要となります。
気道に異常がある際に、特に注意が必要なのは、吸気時のストライダー(喘鳴)が認められるケースです。
後ほど解説しますが、吸気時のストライダーは咽頭浮腫や気道異物、急性喉頭蓋炎などで起こり、緊急性が高い状態です。直ちに用手的気道確保やエアウェイの使用、気管挿管などで迅速に気道を確保しましょう。
下気道の気道狭窄は、COPDや気管支喘息など持病が原因であることが多いため、普段から急な状態の悪化を予測しながら関わることが大切です。
また、その他に重度の窒息の際は、親指と人差し指でのどをつかむ、万国共通の窒息のサインである「チョークサイン」を示すことが多いことも覚えておきたいポイントです。
窒息時の対応方法についてはこちら「おさえるべき窒息の解除方法」をご参照ください。
B:呼吸
呼吸の評価では、特に「視診」「聴診」が重要となります。
・視診
呼吸回数と呼吸様式の確認を行います。正常時の呼吸回数は1 分間に12 ~ 20 回程度のため、25 ~ 30 回近い頻呼吸は異常と認識します。また、呼吸補助筋を使用した努力様呼吸(肩呼吸、下顎呼吸、吸気時間・呼気時間の延長など)は、酸素不足の代償しようとする反応であるため、見逃さないようにしましょう。
・聴診
呼吸音の聴診における異常を察知するポイントは以下の3つです。
①正常な肺胞呼吸音や気管支呼吸音が減弱したり、あるいは消失したりするような状態。また、呼気時間の延長を認めます。
②本来聴取されない場所で違う呼吸音が聴かれる状態。
(※正常呼吸音は、聴取する部位によって気管呼吸音、気管支肺胞呼吸音、肺胞呼吸音の3つに分類されます。)
③ 副雑音自体が肺内外の異常を示唆しています。
副雑音については、後ほど解説します。
C:循環
呼吸困難の患者でも、循環の評価は重要です。脈圧の大きい収縮期血圧上昇や心拍数増加があれば、ショック状態となることもあるため観察しましょう。
D:中枢神経
急性呼吸不全から低酸素血症となれば、意識レベル低下や不穏状態となっていることがあるため、注意が必要です。
緊急性の共有
呼吸困難を認識したら、①第一印象と②一次評価(ABCDEアプローチ)で得た情報をもとに、必要に応じて迅速な情報共有が必要です。緊急を要する場合はすぐにリーダーや医師に報告しましょう。それと並行して応援要請、救急カート・モニター装着・酸素投与・点滴確保の準備も進めましょう。
生命維持のための行動
低酸素血症は生命に危機を及ぼす重大な症状の一つであるため、すみやかに是正する必要があります。
適応は、室内気にてPaO2 60mmHg未満あるいはSpO2 90% 以下で、酸素流量はPaO2 60mmHg以上あるいはSpO2 90% 以上になるように設定しましょう。
低酸素血症に対しての酸素療法には、大きく2つあります。
・酸素療法
酸素療法については「酸素療法における酸素マスクの種類と選び方」をご参照ください。
・人工呼吸療法
人工呼吸器について詳しくはこちら「人工呼吸器の種類と使い分け:~IPPV・NPPVの違いとは~」をご参照ください。
呼吸困難の診断は、肺機能検査、胸部X線、血液検査、動脈血ガス分析などの検査を行う必要があるため、呼吸困難が急に悪化した場合や安静時にも苦しい場合は、早期の医師報告・緊急対応を心がけましょう。
医療機関以外での対応の際は、早めの医療機関の受診を促しましょう。
日常生活指導では、喫煙歴や生活習慣を把握し、必要に応じて禁煙・ストレス軽減・生活習慣の見直し・感染予防が大切です。
まとめ
いかがだったでしょうか。患者さんからの訴えで「息苦しさ」や「呼吸困難感」を聴取することも多いと思いますが、重度化すると死に至ることもあるため慎重なアセスメントが必要です。病態の理解を深め、明日からの看護・ケアに活かしていきましょう。
参考
1)山内豊明,フィジカルアセスメントガイドブック 目と手と耳でここまでわかる, 医学書院, pp.75-76, 2011.
2)日本急性期ケア協会編:日本急性期ケア専門士 公式テキスト 第2版, アステッキホールディングス株式会社, 2022.