敗血症、敗血症性ショックの定義・症状・治療について
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本記事では敗血症・敗血症性ショックの定義、症状、経過、治療についてわかりやすく解説します。
いざという時に命を守る行動につなげられるよう、理解を深めておきましょう。
敗血症とは
日本版敗血症診療ガイドライン2024では、Sepsis-3に基づき、敗血症の定義を「感染症に対する生体反応が調節不能な状態となり、重篤な臓器障害が引き起こされる状態」としています。
わかりやすく言うと、細菌感染を原因とする全身性の炎症反応によって、心臓や肺、腎臓などの重要な臓器に臓器障害が生じ、機能不全を引き起こす病態のことです。
敗血症の症状
初期症状として、悪寒、発熱、全身のふるえ、発汗などが見られます。症状が進行し、敗血性ショックへと移行していきます。
敗血症の診断基準
同じく日本版敗血症診療ガイドライン2024では、敗血症の診断基準を「感染症もしくは感染症の疑いがあり」かつ、「SOFAスコアの合計2点以上の急上昇をもって診断する」と定義づけています。
SOFAスコアとは
SOFAスコアとは、多機能不全を評価する指標です。日本では、多機能不全患者の重症度評価としてICUにて用いられています。
| 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | |
| PaO₂/FiO₂ | ≧400 | <400 | <300 | <200(人工呼吸) | <100(人工呼吸) |
| Plt(×10³/μL) | ≧150 | <150 | <100 | <50 | <20 |
| T-Bil(mg/mL) | <1.2 | 1.2~1.9 | 2.0~5.9 | 6.0~11.9 | 12.0 |
| 平均動脈圧(MAP)(mmHg) | ≧70 | <70 | ドパミン≦5γ ドブタミン |
ドパミン5.1~15γ ノルアドレナリン≦0.1γ アドレナリン≦0.1γ |
ドパミン>15γ ノルアドレナリン>0.1γ アドレナリン>0.1γ |
| GCS | 15 | 13~14 | 10~12 | 6~9 | <6 |
| Cr(mg/mL) | <1.2 | 1.2~1.9 | 2.0~3.4 | 3.5~4.9 | ≧5.0 |
| 尿量(mL/日) | ― | ― | ― | <500 | <200 |
(Singer M, et al:JAMA, 315:801-810, 2016 より)
qSOFAスコア
qSOFAスコア(quick SOFAスコア)とは、SOFAスコアより簡便に敗血症をスクリーニングするための指標です。
SOFAスコアは結果が出るのに1時間程度は要するため、ICU以外の病棟や外来ではqSOFAスコアが用いられています。qSOFAスコアは、敗血症を疑ってスクリーニングする指標であり、単独で敗血症を診断するものではありません。特異度は高いですが感度は低いため、該当しないから敗血症ではないと断定はできません。
項目 |
点数 |
呼吸数≧22回/分 |
1 |
収縮期血圧≦100mmHg |
1 |
意識レベル低下 |
1 |
出典:高橋章宏:『レジデントノート』敗血症診療 その一晩を乗り越える Vol.23.No.13. 羊土社. 2021.
日本版敗血症診療ガイドライン2020では、一般病棟や救急外来において「感染症、またはその疑い」がある場合、qSOFAを用いたスクリーニングを行うことが推奨されていました。
しかし、2024年の改訂版では、qSOFA単独では感度が十分でなく、敗血症を見逃すリスクがあることから、単一スコアによるスクリーニングは推奨されなくなっています。
敗血症性ショックとは
敗血症性ショックは、敗血症が進行し重症化することで、臓器への著しい血流不足によって急激に血圧低下し、多機能不全や意識障害により死亡リスクが高いショック状態に陥ることを言います。
敗血症性ショックは血液分布異常性ショックに分類されます。血液分布異常性ショックとは、動脈または静脈の拡張により、血管抵抗が減少・相対的に血管内容量が不十分になることで起こります。
敗血性ショックの症状
熱発(体温上昇)、呼吸数増加、頻脈から始まり、急激な血圧低下、呼吸困難、出血傾向、多臓器不全、意識障害を認めショック状態となります。
敗血症性ショックの診断基準
日本版敗血症診療ガイドライン2024では、Sepsis-3に基づき、敗血症性ショックの定義を「敗血症の診断基準に加え、適切な初期輸液療法にもかかわらず平均動脈圧65mmHg以上を維持するために血管収縮薬を必要とし、かつ血清乳酸値が2mmol/L(18mg/dL)を超える状態」としています。
敗血症性ショックの症状進行過程
敗血症性ショックは、以下の2段階で症状が進行していきます。
・ウォームショック
・コールドショック
ウォームショック
感染初期には、末梢は温かく赤い状態であるウォームショックの状態になります。エンドトキシンなどが免疫細胞を刺激し、炎症性サイトカインが放出されます。本来は局所の防御反応ですが、菌血症になると全身で過剰に反応し、NOやプロスタノイドなどの血管拡張物質が大量に産生されます。その結果、全身の血管が拡張して血圧は下がりますが、後負荷が軽くなるため心拍出量は維持され、末梢は温かく皮膚が赤い状態であるウォームショックの状態になります。
コールドショック
ウォームショックは長くは続かず、数時間以内に四肢が冷たく蒼白になるコールドショックへと進行します。これは、炎症性サイトカインが血管の内側を覆う内皮細胞を傷つけ、内皮が剥がれ落ちて血管の調整機能を失うためです。反応性を失った血管は収縮に傾き、末梢の血流が悪化します。さらに、傷んだ血管から水分が漏れ出して循環血液量が減少し、同時に炎症によって心筋の収縮力も低下します。その結果、血圧と心拍出量が低下し、コールドショックの状態に移行します。
初期対応
敗血症性ショックに移行すると死亡リスクが高まります。そのため、発熱患者の初期対応において敗血症を見逃さないことは肝要といえます。集中治療室(ICU)以外で敗血症をスクリーニングする方法に、前述したqSOFAスコアがあります。感染症あるいは感染症が疑われる状態において、qSOFAの2項目以上が満たされる場合に敗血症を疑い、早期治療開始や集中治療医への紹介のきっかけとしましょう。
また悪寒戦慄も敗血症を示唆する症状であり、その定義を正確に把握し見逃さないようにしましょう。
敗血症性ショックでは、抗菌薬や血管収縮剤などの薬剤投与、輸液、酸素投与など、早期の全身管理が必要です。
ショックを認識したら、患者さんが心停止へ移行しないように、まずは迅速な情報共有が必要です。すぐにリーダーや医師に報告しましょう。それと並行して応援要請、救急カート・モニター装着・酸素投与・点滴確保の準備も進めましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。ショックは前兆がわかりにくく急激に進行することから、初期対応が重要です。落ち着いて対応できるよう、病態をしっかり理解しておきましょう。
参考
1)日本急性期ケア協会編:日本急性期ケア専門士 公式テキスト 第2版, アステッキホールディングス株式会社, 2022.
2)日本版敗血症診療ガイドライン2024特別委員会:日本版敗血症診療ガイドライン
3)永井 友基、松坂 俊、橋本 知直、阿河 昌治編:みんなで楽しくホスピタリストになろう!, 株式会社じほう,2025.
4)Medical Note. 敗血症性ショック.2024.
5)日本医事新報社.敗血症性ショックの初期がウォームショックである理由は?.2025.
6)敗血症.com. 敗血症診断の歴史.
7)高橋章宏:『レジデントノート』敗血症診療 その一晩を乗り越える Vol.23 No.13. 羊土社. 2021.
8)Singer M, et al:JAMA, 315:801-810, 2016
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