アナフィラキシーショックとは?原因と症状、対応について解説
- 目次
アナフィラキシーは即時型の過敏性アレルギー反応で、生命の危機をも及ぼすことがあります。
今回はこのアナフィラキシーの定義や診断基準、その原因や症状、対処法についてわかりやすく解説します。
アナフィラキシーとは?
アナフィラキシーとは、重篤な全身性の過敏反応であり、通常は急速に発現し死に至ることもあります。
重症のアナフィラキシーは、致的になり得る気道・呼吸・循環器症状により特徴づけられますが、典型的な皮膚症状や循環性ショックを伴わない場合もあります。
アナフィラキシーショックとは?
アナフィラキシーショックとは、アナフィラキシーの中でも循環不全や血圧低下を伴うものを言います。
アナフィラキシーでのアレルギー反応が起こる結果、全身の血管拡張・血管透過性の亢進・血漿成分の血管外漏出が起こり、循環血液量が減少し血圧低下、各臓器への血液還流低下を引き起こしショックに至ります。
アナフィラキシーショックに至ると生命の危機は非常に高まり、迅速な対応が必要となります。
アナフィラキシーの診断基準
以下の2つの基準どちらかに当てはまる場合、アナフィラキシーである可能性が非常に高いとされています。
- 皮膚・粘膜症状に加え気道・呼吸器症状、循環器症状、重度の消化器症状などが急速に(数分~数時間で)発症した場合
- 典型的な皮膚症状は伴わなくても、アレルゲンやアレルゲンになり得る可能性が高いもの(例えば造影剤や抗生剤など)に暴露後、急速に気道・呼吸器症状、循環器症状、消化器症状などが発症した場合
いずれにせよ、アナフィラキシーは検査結果を待ってから診断するのではなく、臨床症状から迅速に判断し対応することが重要です。
ポイント:「これまで起こしたことが無い」は「今回起こさない」保証にはならない!
以前、造影剤を使用する治療を何度も受けたことがある患者。これまで治療中にアレルギー症状を発症したことは無かった。
数度目の造影剤を使用した治療中、突然の気分不良・血圧低下を来した。治療の初めの針の穿刺でなかなか血管に入らずかなり痛みを訴えていたこともあり、痛みによる血管迷走神経反射(ワゴトニー)も疑ったが、結果アナフィラキシーであった。すぐにアドレナリンを使用し対応した。
※「これまで同様の治療でアレルギー症状が出たことがない」という思い込みがあると、対応が遅れがちになるため注意が必要です。
アナフィラキシーショックの原因・誘因
アナフィラキシーの機序は多岐にわたりますが、もっとも頻度の高い機序はIgEが関与する免疫学的機序です。
IgEが関与する機序に多く見られる誘因は、食物、昆虫の毒(ハチ・アリなど)、薬剤などがあります。
薬剤はIgEが関与しない免疫学的機序、およびマスト細胞を直接活性化することによってもアナフィラキシーの誘因となり得ます。
造影剤はIgEが関与する機序と関与しない機序の両者により、アナフィラキシーの誘因となります。
医薬品
医薬品では造影剤を含む診断用薬剤、血液製剤を含む生物学的製剤がもっとも多く、次いで抗腫瘍薬、抗生剤が原因となることが多いとされています。
あらゆる医薬品が誘因となる可能性があり、複数回安全に使用できた薬剤で発症する可能性があることに注意することが重要です。
アナフィラキシー発症のリスクが高い薬剤(造影剤・抗生剤など)を静脈投与する際は、薬剤投与開始から少なくとも5分間は患者を注意深く観察する必要があります。
食物
アナフィラキシーの誘因となる一つに食物アレルギーが挙げられます。
食物アレルギーによるアナフィラキシーでは、アレルゲンとして鶏卵・乳製品・木の実類が多くなっています。
最も頻度の高い原因食物は年齢により異なり、0~3歳は鶏卵、4~6歳は牛乳、7~19歳は落花生、20歳以上は小麦となっています。
食物アレルギーによるアナフィラキシーの多くは自宅で発症します。
食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)
食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)とは、特定の食物を摂取後、運動負荷によって食物アナフィラキシーが誘発される病態です。運動により腸管透過性が亢進してアレルゲンの吸収が促進され、その誘発閾値の低下と誘発された症状の重篤化をきたします。
原因食物は、小麦製品、甲殻類、果物に多く、原因食物摂取後から2時間以内の運動で発症することが多いですが、4時間を経過して発症した例もあります。
運動以外でも、NSAIDs内服、疲労、アルコール飲料や入浴などで誘発されることもあります。原因食物を摂取しなければ運動は可能で、必ずしも運動を全面禁止する必要はありません。
虫刺され
ハチ刺傷によるアナフィラキシーはアシナガバチ、スズメバチ、ミツバチの順に多く、短期間に2回刺傷されるとアナフィラキシーを生じやすくなります。
ハチ以外の昆虫毒アレルギーとして、アリ(オオハリアリ、ヒアリ)刺傷によるアナフィラキシー発症例や死亡例が報告されています。
アナフィラキシーの症状について
アナフィラキシーは様々な臓器に症状を引き起こします。通常、皮膚・粘膜、上下気道、消化器、心血管系、中枢神経系などに生じます。
蕁麻疹や発疹、かゆみ、腹痛や嘔吐・下痢、呼吸時にひゅーひゅーという音がしたり、息苦しさが出ることもあります。またアナフィラキシーショックに至ると、血圧低下や意識障害も出現します。
| 臓器・器官系 | 主な症状 |
|---|---|
| 皮膚症状 | 蕁麻疹、顔面紅潮、眼窩周囲浮腫、血管性浮腫など |
| 消化器症状 | 腹痛、悪心、嘔吐など |
| 呼吸器症状 | くしゃみ、咳、鼻閉、喘鳴、咽頭絞扼感、いびき、生あくびなど |
| 心血管系症状 | 冷や汗、顔面蒼白、血圧低下など |
| 中枢神経系症状 | 多弁、興奮、痙攣、意識消失など |
アナフィラキシーの重症度分類
アナフィラキシーは、軽度な症状であっても、時間経過とともに重症化することがあります。
初期には蕁麻疹やかゆみなどの皮膚症状がみられることがあり、進行すると呼吸器症状や血圧低下、意識障害などを伴う場合があります。
重症化すると、低血圧性ショックや呼吸停止、心停止に至ることもあるため、初期症状が軽度であっても継続的な観察が必要です。
| 重症度 | 主な症状・臨床所見 |
|---|---|
| グレード1 (軽症) |
|
| グレード2 (中等症) |
|
| グレード3 (重症) |
|
アナフィラキシーショックの対応・治療
アナフィラキシーショックを疑った場合、第一選択の治療はアドレナリンの筋肉注射(以下筋注)です。大腿部中央の前外側に0.1%アドレナリンを、成人は0.5mg、小児は0.3mg筋注します。
各施設でアナフィラキシーに対する文書化された緊急時用プロトコールを作成して、定期的な訓練を実施することが重要です。
初期対応
- 準備:初期対応の前に、各施設でのアナフィラキシーに対するプロトコールの作成と内容の見直し、定期的な訓練を実施します。
- 原因除去:アナフィラキシー発症時、可能であれば原因物質を取り除きます。原因と思われる薬剤を静脈内投与中であれば、速やかに投与を中止してください。
- 通報・評価:アナフィラキシーを疑ったらすぐに緊急コール(院外なら119番通報)し、同時に患者の状態(気道・呼吸・循環・中枢神経系・皮膚の状態など)を評価します。
- 体位管理・投与:体位は基本的には臥位とし、アドレナリンが到着次第、アドレナリン0.5mgを大腿中央の前外側に筋注します。
※1・2・3のプロセスは、可能であれば(複数人で対応できる場合など)同時に実施します。 - 持続観察:患者の状態(呼吸状態・呼吸数・酸素飽和度・血圧・脈拍数・意識レベルなど)を頻回に確認し、可能であればモニター装着し持続的に観察します。患者の状態に合わせて体位を調整し、必要時には酸素投与を考慮します。
- 記録:上記を経時的に記録します。
薬物治療
アドレナリン
アドレナリンはアナフィラキシーの第一選択薬です。
アナフィラキシーを疑ったら、すぐに0.1%(1:1000)アドレナリンを0.01mg/kg筋注します。成人は0.5mg、小児は0.3mg(または年齢・体重別の目安量)と簡素化しても構いません。
■ アドレナリン筋注の推奨量基準(体重1kgあたり0.01mg / 最大総投与量0.5mg)
| 対象 | 投与量の目安 |
|---|---|
| 体重19kg以下の乳幼児 | 0.01mg/kg (1mg/mL製剤を 0.01mL/kg) |
| 1~5歳の小児 | 0.15mg (1mg/mL製剤を 0.15mL) |
| 6~12歳の小児 | 0.3mg (1mg/mL製剤を 0.3mL) |
| 13歳以上および成人 | 0.5mg (1mg/mL製剤を 0.5mL) |
アドレナリンの効果は短時間で消失するため、症状が抵抗性を示す場合5~15分毎に繰り返して投与します。また妊婦のアナフィラキシーに対してもアドレナリンは適応です。
アナフィラキシー治療に対するアドレナリン投与の絶対的禁忌疾患はありませんが、心疾患・コントロール不良の高血圧、大動脈解離などの既往のある患者、合併症の多い高齢者などではアドレナリン投与の効果とリスクを考慮することも必要です。
アドレナリンに反応しない場合、特にβ遮断薬(βブロッカー)が投与されている患者にはグルカゴンが有効な場合があります。グルカゴン1~5mgをゆっくり5分以上かけて静脈内投与します。
アドレナリン以外の薬物治療
アドレナリン以外の薬物治療としては、抗ヒスタミン薬も使用されます。ただし、H1およびH2抗ヒスタミン薬は皮膚症状は緩和しますが、その他の症状への効果は確認されていません。
副腎皮質ステロイドは薬剤効果発現に数時間を要するため、二相性反応などの遅発性反応の予防に効果があるとされています。
β2刺激薬吸入は気管支痙攣に対して使用されます。
アナフィラキシーの予防
アナフィラキシーの予防では、原因・誘因物質の回避が基本です。
アナフィラキシーの既往がある患者は、原因物質を特定してそれを徹底的に回避することが重要です。また対応マニュアルを作成し、患者本人や家族、職場・学校関係者などに周知しておくようにすることも大切です。
その上で、本人はエピペンの処方を受け、定期的な使用方法の指導と使用期限の確認・必要時の交換を行います。
その他、アレルゲン免疫療法(減感作療法)が有効な場合もあり、アレルギー外来などの専門医の受診と定期的なフォローアップを考慮します。
エピペンに関して
エピペンはアドレナリン自己注射薬で、アナフィラキシーのリスクのある患者が携帯し、症状発症時に自己投与するための医療機器です。医療機関で処方され、処方の際はその使用方法や常時携帯すること、期限切れに注意することなどを指導します。
まとめ
アナフィラキシーは即時型のアレルギー反応で、全身性に症状を引き起こし、急速に症状が進行し生命の危機となることもあります。アナフィラキシーを疑ったら、すぐに必要な対処をすることを心がけてください。
参考:
- 一般社団法人 日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン2022 Web_AnaGL_2023_0301.pdf(最終アクセス2026.06.10)
- ナースの道しるべ 【看護師向け】アナフィラキシーショックの対応|急変時に使用する薬剤の | ナースの道しるべ(最終アクセス2026.06.09)